大阪府立水生生物センターと共同事業の「水生生物採集・飼育体験学習会(淀川体験学習)」が5回目を迎えました。 次世代の担い手である子どもたちに、水辺に親しむ機会を提供し、水辺の生き物と水辺環境に興味と関心を 持ってもらうことを目的とした企画です。 内容は3段階に分かれます。 1)【採集】 小学生が魚や水生昆虫など生き物の採集を体験する機会です。 採集活動は、淀川左岸の点野ワンドを中心に実施します。 2)【飼育・観察】 大阪府立水生生物センターの協力を得て、広い飼育池で餌やりと観察をします。 日常飼育は当会スタッフが担当し、定期的に稚魚の成長を観察する観察会を実施します。 平成17年には稚魚観察用水槽が設置されました。 自分たちが捕獲した生き物の成長を確かめるのは大きな喜びにつながります。 採集時は、判別不能の稚魚が成長するにつれて徐々に魚種名が明らかになり、採集した稚魚の多様性を理解すること につながります。 3)【里帰り放流】 秋に成長した生き物を採集地点に返します。(外来生物、コイを除く) 自分たちで採集した稚魚を観察し、その成長過程を教えてくれた魚達に感謝を込めて生まれた場所へ里帰りさせる活動です。 子どもたちの水辺の生き物たちへの関心を高め、自然保護・環境保全についての考えをまとめることへの、大きな一助となる と期待しています。 ※当会は、淡水魚の安易な放流(メダカ、コイ等)に関しては反対の立場ですが、本事業はプロスタッフ協力の元、 放流記録を残し、リスクが最小限になるように考えています。 現段階では、子どもたちの水辺の生き物たちへの関心を高めるために必要なステップだと考えます。 今年も、木屋小学校の5年生(約100名)を対象に淀川のワンドで春生まれの稚魚採集を体験してもらいました。 ここでは採集の様子を紹介いたします。 <文章&撮影:新城> |
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<第5回 淀川体験学習【採集】> |
午前中に、通路となる区域の草刈やアルミ製の階段設置等の準備を終えて、児童を迎える直前に スタッフが全員集まり役割分担を再確認しました。当会会員の参加者は8名となりました。 |
例年どおり、現場には事前に「淀川体験学習への協力のお願い」という告知文を掲示。 安全確保を最優先にし準備万端の上で、子ども達を迎えました。 |
児童全員が河川敷に整列して座り、児童の代表者から「よろしくお願いします」との挨拶がありました。 |
続いて、水生生物センター長、水辺に親しむ会の挨拶とお話。 子ども達はおとなしく話を聞いていました。 |
子ども達は、配布された資料も熱心に見ていました。 安全管理等の問題で、川に入るグループと河川敷でクイズをするグループの二グループに分けました。 説明が終わると、川に入る先発グループを淀川の点野ワンドへ誘導しました。 |
階段を降りたところで、稚魚をすくう網とバケツをスタッフが手渡しします。 階段は、午前中に仮設設置したアルミ製のものです。 |
階段はかなりの傾斜があるので、慎重に一歩づつ降ります。 バケツと網を持った子ども達は、点野ワンドの一角をぐるりと囲み水に入る前の注意を受けます。 |
安全確保の為、スタッフは深くなる所で待機します。これ以上行くと深くなるという目印&監視員となります。 元気な男の子は、水に入った途端にビショ濡れになっていました。それでも稚魚採集を楽しんでいました。 |
稚魚は本当に小さいのでじっくり見ないと見過ごしてしまいます。 スタッフが採集した稚魚を子ども達に見せながら説明をします。 |
こちらは本流側のグループです。 本流側は、岸辺より2〜3mのところで急に深くなっているのでスタッフは安全面で気を使います。 |
水に入るのをためらっていた女の子も一度足を浸けると楽しそうにしていました。 本流側ではオイカワの稚魚などがみられました。 |
淀川から離れ、陸上のクイズグループの様子を見てみると・・・。 クイズ大会真っ最中。スタッフがメダカパネルを手にしていました。 |
ドジョウのヒゲの数は何本?淀川で増えて困っている水草は? みんな元気に手を挙げて答えます。 |
時間が来れば、川に入っていたグループとクイズをしていたグループが交代します。 クイズも一からスタート。川に入るグループは場所を変え、点野ワンドより上流側で実施しました。 |
この場所は、今回初めて採集にチャレンジした所ですが、一部に泥が深くなっている場所がありました。 慣れてくると子ども達は楽しんでいたようですが・・・。 |
泥に足を取られるというのも初めての体験だと思います。川や池の怖いところですが、 泥に足を取られる経験をすることで、一人ではどうにもならない状態を実感したと思います。 |
尻餅ついたりしてドロドロになりながらも稚魚採集を楽しみました。 時間はあっと言うまに経過します。 |
採集が終わると、個人のバケツから大きな容器に採集した生き物を入れます。 |
稚魚の回収も終了し、河川敷へ引き揚げます。 子ども達の足はドロドロ・・・家に帰ってからのお母さんのコメントが心配です。 |
全員揃ったところで、セブン-イレブンみどりの基金 2006年度「環境市民活動助成」 の助成金で作成した生き物図鑑を配布しました。最後に、子ども達の代表者からお礼の言葉を頂きました。 |
子ども達を見送った後に、もうひと仕事待っています。 後片付けと撤収作業。さらに水生生物センターに戻って・・・ |
採集した稚魚たちはまだ元気に泳いでいました。 |
移送のため、ビニール袋に酸素を入れてパッキング作業をします。 |
水生生物センターに戻り、稚魚の選別作業を行います。 ビーカーで一杯ずつビニール袋の水を汲み出し、外来種は居ないか、 エビやヤゴなど稚魚を捕食する生物は居ないかを丁寧に見極めます。 |
スジエビやヌマエビ、ヤゴなどの生物は、水生生物センター内のビオトープ池に放ちました。 |
水草には、コイ科魚類の卵が付いていました。 オイカワの稚魚は惜しくも☆に・・・。 |
根気良く、稚魚の選別をした後、水生生物センター内の養魚池に放流しました。 今後、餌やりなどの世話がはじまります。 |
今回採集した稚魚はカネヒラ、シロヒレタビラ、フナ、オイカワなどを確認しました。 昨年よりは稚魚の採集数が増えていますが、とても楽観視できるような状況ではありません。 稚魚が採れた子ども、採れなかった子どもも、ドロドロになって良い思い出になったと思います。 特に、女の子はこれが最初で最後の淀川での水遊びになるかもしれません。 地元の河川である淀川に足をつけた感覚を大切にしてもらいたいものです。 さて、これで事業が終わったわけではありません。 稚魚採集はスタートであってこれから稚魚の成育を見守り、成長を観察するステップへと入ります。 当会の熟年チームが主体となり餌やりや稚魚観察会など事業運営しておりますので、 興味のある方は御一報ください。 |
<アンケート集計結果> |
今回、淀川体験学習の実施後にアンケート調査を実施しました。 5年生99名(男の子43名、女の子56名)から回答を得ました。 アンケートの中から概要を紹介いたします。 アンケート結果より、72.7%の児童が生き物が好きと答えています。 63.6%の児童が初めて魚とりを体験し、46.5%の児童が初めて川の生き物を触り、 31.3%の児童が初めて川に足をつけたことがわかりました。 この数字を見ると淀川体験学習が児童にとって小学校時代の思い出として心に残る学習になったと考えます。 <児童の感想を一部紹介します(原文のまま)> ■ 川でいっきに3びき取れたのがうれしかった。淀川にはじめて足をつけてよかった。 ■ 魚はとれんかったけど、ヤゴはとれたので、うれしかったです。 ■ 川の水もつめたくてきもちよかったです。 ■ とっても楽しかったし、おもしろかったです。私はまた淀川が好きになりました。 ■ 魚はとれなかったけど、川に入れてうれしかった。 ■ 稚魚取りが楽しかった。もっと稚魚とりをしたかった。 ■ はじめての魚とりがとってもうれしかったし楽しかったです。 ■ 稚魚を取れた時、とてもうれしかった。 ■ わたしははじめて、稚魚を見ました。すごく小さくてかわいかったです。 ■ 勉強にすごくなった。もっと生き物を好きになれました。 ■ 川のそこがどろだったので入るのが「イヤッ」てかんじだったけれど、入ってみるといがいにおもしろかったです。 ■ ヤゴとか稚魚を採れてよかったです。 ■ 1ぴきも生き物はあみでとれなかったけど、たのしかった! ■ なんだか淀川体験学習をしたおかげで、生き物好きに近づいたような気がします。 回答欄に無回答の児童は6名。感想を記入した殆どの児童が楽しい・よかったという印象を持っていました。 採集する稚魚の数よりもワンドに足を入れ、水の冷たさや泥の感触など足に伝わる感覚を 体験することが重要だと考えます。新しい発見があるのはとっても面白いのですから。 |