打上川治水緑地内の池 調査報告概要
〜ブルーギルの詳細調査〜


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<1.調査日時>
 
平成13年6月9日(土) AM9:00〜 PM3:30
 
<2.調査場所>
 
打上川治水緑地内の池(排水口側の沈砂池を中心に調査)
 
<3.採集方法>
 
・引網、投網、タモ網、もんどり
※タモ網は引網に入った魚を掬い取るのに使用しました。
※外来種(ブルーギル)はホルマリンに固定、在来種は体長・体高計測後に隣の下池に放流しました。
 
<4.調査目的>
 
・外来種(オオクチバス・ブルーギルに限定)と在来種との魚相調査
・外来種(オオクチバス・ブルーギルに限定)の雌雄構成調査
 
<5.調査趣旨>
 
本調査は、「水辺に親しむ会」の打上川治水緑地 調査グループ主催で行われたものです。 平成8年3月に完成した打上川治水緑地内の池には竣工時に、大阪府立淡水魚試験場の担当者が淀川水系の魚達を放流しています。 担当者への聴き取り調査により大間排水機場内で採集したゲンゴロウブナ(ヘラブナ)、ギンブナ、 コイ、モツゴ、コウライモロコ、カマツカ、ニゴイ、タイリクバラタナゴ、スジエビ、ドブガイを放流したと判明しました。 竣工時より5年が経過しており現在、どのような魚類が生息しているのか確認する為に、特定区間 (沈砂池:13m×30m コンクリート張り390平方メートル)で引網を引き全容を明らかにしようと したものです。(コンクリート底で水深70cmと安定しており安全性を考慮し選定した。)
また、事前調査にて放流記録の無いブルーギルの数が多い事が判明しており、外来種と在来種 の魚相がどのようになっているのかを調べることにしました。
ブルーギルについてはホルマリン固定した後、解剖して6月上旬の時点で卵巣と精巣の発達した個体が どれほどいるのかを確認することにしました。
 
<6.調査人員>
 
当日の調査人員は、「水辺に親しむ会」会員(19名)を中心に合計29名(子供含む)の参加がありました。
 
<7.打上川治水緑地について>
 
打上川治水緑地は、洪水のときに寝屋川と打上川の両河川の流量を調整するために、大阪府が 造った施設です。普段は市民の憩いの場として利用できるように寝屋川市が大阪府から占用を 受け、平成8年4月1日から都市公園として利用しています。 緑地内は、上池と下池をせせらぎで結び、親水施設としても機能しています。
 
 

<8.調査結果>
 
【調査日の天候等 共通データ】
@ 天候:晴れ A 水温:25℃ B 水深:70cm
C PH:10.1 D DO:11.9mg/l  E 電導度:0.25μS/cm  F 濁度:31


<8−1>
【モンドリによる採集結果】
@採集方法:沈砂池にて約30分間沈めた後に回収する。合計7個のモンドリを使用した。
A餌:養魚用配合飼料+サナギ粉
B所見:モツゴの魚体の一部に出血が見られる個体がいた。
 餌に集まるブルーギルはメスが多かった。
※モンドリ投入個所の図は省略します。

表−1:モンドリ採集結果
和名
平均体長(mm)
平均体高(mm)
尾数
オス
メス
不明
ブルーギル
54.3
22.4
8
1
5
2
モツゴ
46.7
10.1
26
テナガエビ
1

和名
最大体長(mm)
最小体長(mm)
ブルーギル
60
44
モツゴ
75
15

※尾びれを含む「全長」は計測していません。体長・体高を計測しています。
※ブルーギルの雌雄決定は卵巣と精巣の有無で判定、未発達は不明としました。



<8−2>
【引網による採集結果(沈砂池)】
@採集方法:引網で沈砂池の魚を採集する。(合計4回網を引いた)
A所見:モツゴの魚体の一部に出血が見られる個体が多数いた。
 ブルーギルの脊椎骨変形魚がいた。

表−2:引網採集結果(1回目:沈砂池)
和名
平均体長(mm)
平均体高(mm)
尾数
オス
メス
不明
ブルーギル
52.3
21.5
77
34
16
27
モツゴ
44.6
10.2
58
ギンブナ
113.2
41.0
61

和名
最大体長(mm)
最小体長(mm)
ブルーギル
62
41
モツゴ
60
30
ギンブナ
190
70

※尾びれを含む「全長」は計測していません。体長・体高を計測しています。
※ブルーギルの雌雄決定は卵巣と精巣の有無で判定、未発達は不明としました。
※ブルーギル脊椎骨変形魚:2匹含む


表−3:引網採集結果(2回目:沈砂池)
和名
平均体長(mm)
平均体高(mm)
尾数
オス
メス
不明
ブルーギル
51.6
20.9
74
35
20
19
モツゴ
43.6
11.1
32
ギンブナ
93.9
35.3
78
メダカ
27.5
6.0
2
ヤゴ
6
テナガエビ
1

和名
最大体長(mm)
最小体長(mm)
ブルーギル
69
41
モツゴ
60
25
ギンブナ
180
26
メダカ
30
25

※尾びれを含む「全長」は計測していません。体長・体高を計測しています。
※ブルーギルの雌雄決定は卵巣と精巣の有無で判定、未発達は不明としました。
※ブルーギル脊椎骨変形魚:5匹含む


表−4:引網採集結果(3回目:沈砂池)
和名
平均体長(mm)
平均体高(mm)
尾数
オス
メス
不明
ブルーギル
53.3
20.7
17
5
4
8
モツゴ
44.9
11.0
67
ギンブナ
73.2
27.3
48
メダカ
ヤゴ
テナガエビ
1

和名
最大体長(mm)
最小体長(mm)
ブルーギル
64
44
モツゴ
60
32
ギンブナ
170
20
メダカ

※尾びれを含む「全長」は計測していません。体長・体高を計測しています。
※ブルーギルの雌雄決定は卵巣と精巣の有無で判定、未発達は不明としました。


表−5:引網採集結果(4回目:沈砂池)
和名
平均体長(mm)
平均体高(mm)
尾数
オス
メス
不明
ブルーギル
49.3
19.9
9
5
1
3
モツゴ
44.4
10.8
49
ギンブナ
79.4
29.2
44
メダカ
ヨシノボリ
45.0
9.0
1
ヤゴ
18
テナガエビ
18

和名
最大体長(mm)
最小体長(mm)
ブルーギル
60
39
モツゴ
57
22
ギンブナ
184
22
メダカ
ヨシノボリ
45
9

※尾びれを含む「全長」は計測していません。体長・体高を計測しています。
※ブルーギルの雌雄決定は卵巣と精巣の有無で判定、未発達は不明としました。



<8−3>
【引網による採集結果(下池)】
@採集方法:引網で下池の魚を採集する。(合計1回網を引いた)
Aカウント方法:ブルーギル以外は尾数のみカウントする。
B所見:モツゴの魚体の一部に出血が見られる個体が多数いた。
 ブルーギルの脊椎骨変形魚がいた。
 ヨシノボリの稚魚を多数目視確認。

表−6:引網採集結果(1回目:下池)
和名
平均体長(mm)
平均体高(mm)
尾数
オス
メス
不明
ブルーギル
52.0
21.8
42
24
11
7
モツゴ
64
ギンブナ
144
メダカ
ヨシノボリ
1
オイカワ
1
ニゴイ
1
タイリクバラタナゴ
9
ヤゴ
1
テナガエビ
3

和名
最大体長(mm)
最小体長(mm)
ブルーギル
65
42

※尾びれを含む「全長」は計測していません。体長・体高を計測しています。
※ブルーギルの雌雄決定は卵巣と精巣の有無で判定、未発達は不明としました。
※ブルーギル脊椎骨変形魚:1匹含む



<8−4>
【投網による採集結果(下池)】
@採集方法:投網で下池の魚を採集する。
A所見:大型のコイやゲンゴロウブナ(ヘラブナ)が採集できた。
  オイカワやニゴイなど沈砂池では見られなかった魚が採集できた。

表−7:投網採集結果(下池)
和名
平均体長(mm)
平均体高(mm)
尾数
オス
メス
不明
ブルーギル
52.6
21.7
11
0
6
5
モツゴ
50.0
15.0
1
ギンブナ
93.3
35.0
3
メダカ
ヨシノボリ
オイカワ
100.0
25.0
1
ニゴイ
125.0
26.7
3
タイリクバラタナゴ
コイ
310.0
95.0
1
ゲンゴロウブナ
255.0
110.0
1
ヤゴ
テナガエビ

和名
最大体長(mm)
最小体長(mm)
ブルーギル
60
47

※尾びれを含む「全長」は計測していません。体長・体高を計測しています。
※ブルーギルの雌雄決定は卵巣と精巣の有無で判定、未発達は不明としました。
※小型のフナは詳細な同定はせずギンブナとしました。
※ゲンゴロウブナと判定できる大型のフナは個別に記載した。
※口が変形したギンブナ1匹採集。



<8−5>
【採集結果合計(沈砂池)】
@集計方法:引網4回とモンドリ採集数の集計。

表−8:沈砂池の採集結果合計
和名
1回目
2回目
3回目
4回目
モンドリ
合計
生息密度
ブルーギル
77
74
17
9
8
185
28.4
4.7
モツゴ
58
32
67
49
26
232
35.6
5.9
ギンブナ
61
78
48
44
0
231
35.5
5.9
メダカ
0
2
0
0
0
2
0.3
0.1
ヨシノボリ
0
0
0
1
0
1
0.2
0.0
採集魚類総数
607尾
尾/10u
ヤゴ
0
6
0
18
0
24
テナガエビ
0
1
0
18
1
20


<8−6>
【採集結果合計(下池)】
@集計方法:引網1回と投網採集数の集計。

表−9:下池の採集結果合計
和名
引網
投網
合計
ブルーギル
42
11
53
18.7
モツゴ
144
1
145
51.2
ギンブナ
64
3
67
23.7
ヨシノボリ
1
0
1
0.4
オイカワ
1
1
2
0.7
ニゴイ
1
3
4
1.4
タイリクバラタナゴ
9
0
9
3.2
コイ
0
1
1
0.4
ゲンゴロウブナ
0
1
1
0.4
採集魚類総数
279尾
ヤゴ
1
0
1
テナガエビ
3
0
3

<8−7>
【ブルーギルに関する採集結果集計】
@計測方法:ホルマリン固定後に、体長・体高を計測。解剖して雌雄を判定。

表−10:ブルーギルの採集結果
和名
最大体長(mm)
最小体長(mm)
平均体長(mm)
平均体高(mm)
オス(尾)
メス(尾)
不明(尾)
合計(尾)
ブルーギル
69
39
52.2
21.3
104
63
71
238

表−11:ブルーギルの脊椎骨変形率
採集場所
脊椎骨変形魚(尾)
脊椎骨変形率(%)
採集数(尾)
沈砂池
7
3.8
185
下池
1
1.9
53

※尾びれを含む「全長」は計測していません。体長・体高を計測しています。
※ブルーギルの雌雄決定は卵巣と精巣の有無で判定、未発達は不明としました。



<9.考察>
 
@  沈砂池の魚類分布は(表−8:沈砂池の採集結果合計)よりモツゴ35.6%(生息密度5.9尾/10u)、ギンブナ 35.5%(生息密度5.9尾/10u)、ブルーギル28.4%(生息密度4.7尾/10u)であり、 上記3魚種で全体の99.5%を占めていました。モツゴ、ギンブナ、ブルーギルは水質の 汚れた止水域でも生活できる魚種です。池の底がコンクリート張りという条件の為、棲める魚種 が限定されたとも考えられますが、とても貧相な魚相でした。

下池では、一度しか引網を引いていませんが、下池でも上位魚種の順位は変わらず(表−9:下池の採集結果合計) よりモツゴ51.2%、ギンブナ23.7%、ブルーギル18.7%の3魚種で全体の93.6%を占めていました。

しかし、砂礫底という違いがありオイカワ、ニゴイ、タイリクバラタナゴの姿を確認することが できました。 沈砂池と比較して、下池にはガマの仲間など抽水植物が存在するので多様な魚種が見られるものと思います。 下池ではヨシノボリの稚魚が大量に泳いでいるのを確認しました。

当初、放流された魚達と今回の採集魚種10種を比較すると、コウライモロコとカマツカが見当たりませんが、 今後の調査により発見できる可能性はあると思います。

放流記録の無い、メダカ、ヨシノボリ、オイカワが存在する理由を調べてみると平成9年に、 治水池として、本来の機能を発揮し寝屋川と打上川の水が大量に流入した記録が残っています。 細かな話をすれば小規模の流入は10回程度あるようですし、池の水を確保する為に少量はポンプにて導入しています。 こうした増水時に、河川から流入し取り残された魚種が、打上川治水緑地内の池で繁殖を重ねて現在に至っているものと考えます。

ブルーギルに関しても同様な考え方が可能ですが、平成9年時点で打上川治水緑地より上流部の寝屋川と打上川に 存在していたのか確認が取れてないので断定できません。
 
A  引網を使用して特定区域(排水口側の沈砂池)の全数調査を行ったにも係らずオオクチバスが一匹も採集できなかったのは予想外でした。 調査時期がオオクチバスの産卵期であった為に、砂礫底のある下池の方に移動していたとも 推測できます。打上川治水緑地内の池では30cm程のオオクチバスを採集した実績がありますので、生息していると考え られますが個体数はそう多くないと推測されます。

ブルーギルについては(表−8:沈砂池の採集結果合計)及び(表−9:下池の採集結果合計)より、3番目に多い魚種となっています。 特徴的なのは(表−10:ブルーギルの採集結果)より平均体長52.2mmと昨年産まれたと思われる個体ばかりで、 2年魚以上と思われる個体の採集ができなかったことです。 採集魚の最大体長は69mmでした。 しかし、1年親魚でも卵巣と精巣は十分に発達しており、繁殖行動に参加できるものと考えます。 (表−10:ブルーギルの採集結果)よりオスが104匹(43.7%)、メスが63匹(26.5%)、不明が71匹 (29.8%)という解剖結果でした。卵巣と精巣が明らかに発達していた個体が全体の70.2%も占めていました。

この結果より今後もブルーギルの繁栄は継続するものと思われます。
 
B  水質が現状のままで、放流した記録のないブル-ギルが幅を効かせている状況が続けは、 魚相はたいへん貧相な状態で推移するものと予想します。 また、モツゴやギンブナ、コイにはイカリムシの付いている個体や皮下出血などが認められ、寄生虫が高確率で寄生していました。 寄生虫ばかりではなく、ギンブナには口のゆがんだ変形魚や背曲がりのブルーギルを確認しました。

原因を特定するのは困難だと思いますが、寄生虫に関しては、魚相が貧相な為、在来種の 占有種であるモツゴに寄生虫が発生すると瞬く間に感染が広がり、人間の目にする機会も多い ので病気の魚が目立つ状態になっているものと考えます。 水質の浄化を図り、多様な魚種が棲める環境にすることが望まれます。

ブルーギルには脊椎骨変形魚(背骨がS字型に湾曲)が見られました。 脊椎骨自体は正常と思われるので卵の状態からの先天的な変形や、遺伝的な問題ではなく、 成長する一部筋肉の異常発達により骨に圧力がかかり曲がったと推測します。 (表−11:ブルーギルの脊椎骨変形率)より沈砂池では3.8%、下池では1.9%の発生割合でした。 これは、外見から見て明らかに変形のある個体数なので専門的に詳細調査すると発生率は上昇すると思われます。 この場合も、原因を特定するのは困難ですが、上流河川に流入する農薬など薬品の影響、 昨今話題になっているルアー釣りで使用するワームから溶出する環境ホルモンの影響も 可能性としては考えられます。今回の引網調査でもたくさんのワームを引き上げました。

今後は、ブルーギルの変形率にも注目して調査を継続したいと考えています。
 


<10.謝辞>
 
今回の調査は、多くの関係者の協力を得て実現することができました。

<具体的な名前の記載がある為、省略>

関係者の皆様には大変お世話になりました。 ありがとうございます。

今回の調査データは1回目の基礎データとなります。 今後も継続して調査を進めデータを蓄積することが重要と感じています。 現在の池の状況は魚にとっては良いとは云いがたいですが、現状を把握することから 次ぎへのステップが踏み出せるものと考えます。多様な魚類が棲める環境になればそこに 集まる鳥類も増えるでしょうし、そこに訪れる人間にとっても素晴らしい場所となるはずです。
今後とも御支援願えれば幸いです。
 

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