淀川左岸幹線水路の生物観察メモ


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<はじめに>
H12年10月14日(土)大阪府寝屋川市の淀川左岸幹線水路の生物観察会が行われました。
これは「水辺に親しむ会」の例会実習として行われたものです。

このページは、Web管理者が撮影した写真と採集した状況と調査の概要レポートであり、
「水辺に親しむ会」として纏めたものではありません。
正式な報告は、H12年11月19日(日)に同じく寝屋川市内で開催されたエコフェスタにて発表しました。

採集した個体の一部はエコフェスタにて展示し、市民の方々に見ていただき好評を得ました。


<調査目的>
 
・どのような生物が生息しているのか。
・生物と環境の関係を調べる。
・生息している生物がどのような生活をしているのか。
 
<調査場所>
 
大阪府淡水魚試験場の東側を流れる淀川左岸幹線水路(約500mの区間)
 
<調査方法>
 
上流部(200m)と下流部(300m)において2グループに分けた調査員が下記の調査を実施。
 
1)生息環境
地形、水深、底質、水草の分布を記録。
水温、pH、DO、COD及び導電率を測定。
 
2)魚
投網、(4.5m、目合い5mm)により魚を採集し、魚の種類と尾数を採集回数とともに記録。
採集魚を淡水魚試験場に持ち帰りオイゲノールにて麻酔後、体長を測定。
 
3)二枚貝
コドラート(1×1m)内の二枚貝を採集し底質を記録。
種類と個体数及び殻長を測定。
 
4)底生動物
コドラート(25×25cm)内の泥を採集し底質を記録。
種類と個体数を測定。
 
5)水生植物
水生植物を採取し種を同定。
 

<結果>
 
1)生息環境
上流部
下流部
砂礫底なので水草が随所に繁茂している。
PH:8.66,DO:8.24、水温:20.7℃
コンクリート底部は水草はない。
PH:9.19,DO:10.34、水温:21.7℃


<調査場所>
<用水路の上流の様子>
用水路 用水路
上流は砂礫底なので水草がたくさん生えてます。
水を抜いても水底は凹凸があるので水のある深場がたくさんあります。
 
<用水路の下流の様子>
用水路 用水路
下流は3面コンクリート張りになります。水草が生えていません。
用水路 用水路
用水路の最下流部です、ここで行き止まりとなり流れは地下へ。
用水路 用水路
用水路終点の溜まり部分での採集の様子。底は泥が堆積していて足を入れると抜けない(^^;
<上流と下流の様子>
上流は砂礫底なので水草がたくさん生えてますが、下流に下ると3面コンクリート張りになるので
水草は生えていません。写真でご覧のように途中は魚が住めそうな所は何もありません。
3面コンクリートになると流れが速くなり砂や泥が流され水草が定着できないのです。
下流部で採集した魚の大半が用水路終点の溜まり部分で採集されています。
水草も上流部分の延長である砂礫底での採集となりました。

2)魚 【採集された数と種類(体長分布などは正式報告にて)】

上流部
下流部
コウライモロコ
106匹
ギンブナ
80匹
オイカワ
37匹
ニゴイ
52匹
ギンブナ
32匹
モツゴ
9匹
カダヤシ
26匹
オイカワ
7匹
カマツカ
21匹
カマツカ
4匹
ニゴイ
13匹
タイリクバラタナゴ
2匹
シロヒレタビラ
5匹
コウライモロコ
1匹
タウナギ
1匹
タウナギ
1匹
コイ
1匹
コイ
1匹
10
モツゴ
1匹
10
シロヒレタビラ
1匹
11
カムルチー
1匹
11
12
ヌマチチブ
1匹
12
13
ドジョウ
1匹
13
14
ナマズ
1匹
14
合計
248匹
合計
158匹


<魚調査>
魚 魚
魚 魚
魚 魚
魚 魚


<魚調査2>
コイ
コイ
ナマズ
ナマズ
カムルチー
カムルチー
タウナギ
タウナギ

3)二枚貝 【採集された数と種類(体長分布などは正式報告にて)】

上流部(12m2)
下流部(15m2)
イシガイ
22個
イシガイ
23個
ドブガイ
11個
マシジミ
5個
ヒメタニシ
3個
ドブガイ
3個
マシジミ
2個
ヒメタニシ
1個
トンガリササノハ
1個


<貝>
貝 貝

4)底生動物

上流部
下流部
採集できず。 採集できず。


<ベントス>
ベントス調査の様子



5)水生植物

上流部
下流部
セキショウモ
セキショウモ
ヤナギモ
ヤナギモ
フサモ
フサモ
ササバモ
ササバモ
ハゴロモモ
マツモ
クロモ
コカナダモ


<水生植物>
水草 水草
水草 水草

<Web管理者の私的な感想>
 
少し水は冷たく感じましたが、半袖に半パンという真夏スタイルで用水路に挑みました。(笑
一度水に入ればあとは童心に返って夢中で魚取りしてましたので何も気にかかることはありません。
今回の調査は前年度に引き続き2回目となっています。
河川管理組合に調査協力のお願いをして、上流部の揚水ポンプを半日停止してもらっています。
普段は水をたっぷり湛えているので本格的な調査は出来ません。

用水路では、砂礫底に二枚貝がたくさん生息しているのが目視でも十分確認できました。
タナゴ類がもっと採れてもいいとは思いましたが、投網とタモ網中心の採集でしたので
思うように採れませんでした。写真にある大きなカムルチーやコイの採集には私も関与してます。(^^)

下流部の三面コンクリート張り水路では、水が最後の溜まりにしかないので当然魚はその場所に集まっています。
コンクリート底部の魚が全部集まってるわりには数が採れていません。
上流部と違い泥底なので、コウライモロコやオイカワなどの魚は殆んどいません。
ギンブナやニゴイなど泥底でも生活できる魚種が採集できました。

写真を見ていただければ分かるように両サイドをコンクリートにしても底面を砂礫のままに
しておくだけでたくさんの魚種の姿が見れることが分かると思います。
たった500mほどの範囲ですが、砂礫底とコンクリート底の違いで生息する魚種が異なります。

三面コンクリート張りにすると河川を管理する上ではとても楽だと思います。
水をただ下流へ流すという目的の為には最適でしょう。流れを悪くする水草を除去する必要もありませんからね。
治水面などを考えると、三面コンクリート張りが絶対に悪いとは言い切れません。
要は、適材適所にそれを活用しているかだと思います。

近頃、メダカが激減している要因の多くは小さな田んぼの横を流れる用水路でさえ
三面コンクリート張りになっているからだと思われます。
メダカのように卵を水草に産む魚は卵を産むことができないのですからね。
魚を呼び戻すには、こうした河川の形も考える必要がどうやらありそうです。
安易に放流すれば魚が帰ってくるということではありません。まずは、魚が住める環境を与えてあげる必要があります。

近年は、行政側もビオトーブなどについても考えておられたりしますから、今後は配慮される
ことも多くはなるでしょうけども、市民としては共に考えていく姿勢を持ちたいですね。

今回の調査で個人的に一番良かったことは、この用水路ではオオクチバスとブルーギルが採集されなかったことです。
この2種に限ってはいつまでも採れずにいて欲しいと願っています。(^^)
また、来年度も調査できればいいなぁ。



<ご注意>
 
このコンテンツを見られて「さあ採集に出かけよう!」と思われた方へ

残念ながら上記で書いている通り、今回は調査の為に河川管理組合さんに依頼して事前に水を抜いています。
通常は、少なくとも水深1〜2mはありますし、流れも速いので用水路に降りての採集は不可能です。
従って用水路に降りるのは危険ですから下に降りる階段さえ準備されていません。
写真を見てもらえば、人間の大きさと堤防の高さの関係を理解していただけると思います。
今回の調査は行政手続きなど特別な準備をした上での調査であることをご理解ください。

今回、場所を公開した理由としては、3面コンクリート張りの川底と砂礫底でどれだけ
生息する魚の種類が異なるのかを強調したかったのです。
魚のデータはその根拠を提示したいのであえて示しました。

このページをご覧の方には居られないとは思いますが、ホームページや書籍などで生息データが公開されると
根こそぎ採ってやろうとする輩がいるようです。
個人の趣味の範囲での採集に関しては問題ないとは思いますが、モラルの低下した人達が
増えてきているのは事実です。

本論ではないのですが、全国的に希少種の魚を採る業者が出てくるのはそれを「売るショップ」があり、
それを「買う客」がいるからです。この場を借りて、魚が好きで魚を飼育している人はそういう個体に
手を出さない(絶対買わない)ということを強くお願いしたいと思います。
間接的に採集業者を助け、自然破壊を助長していることにつながります。
それは飼育者として本意ではないでしょう。

魚は生息場所を確保し保護改善できれば、たくさん卵を産みますのでドンドン増えると思います。
珍しいから飼うという気持ちも分からないではないですが、それを増やすことが出来る人は
とても少ないはずです。また、採集地が判明していない個体をむやみに放流すると交雑という
遺伝子レベルでの問題も発生させることになります。

用水路の実状が通常採集が難しいことを理由に、実験的に生息場所を公開しましたが
現場で不穏な行動を目にした場合、このコンテンツは即削除といたしますのでご理解ください。



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